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No.4 鬼子の闘い(1/3)

last update تاريخ النشر: 2025-09-08 06:00:16

 ボクが”あたし”との統合を果たそうとしていた矢先、「元祖」六道園が消失した。それからボクは、冷たく暗い海でずっと漂い続けていた。そこはまるで原始の海のようだった。空には赤黒い雲が垂れ込め見渡す限り黒い波が広がっていた。波間の向こうに、いくつもの巨大な竜巻が空と海とを繋ぎ、電光を伴って万物を宙に吸い上げていた。泳いでも泳いでも陸地らしい場所にたどり着けなかった。しまいに力尽きて水に沈み息が出来きず意識を失ったが、気づくと元の水面に浮かび上がっていた。ボクはそれを何度も何度も繰り返す永劫無窮の中にいたのだった。それはまさに地獄。

 それが今、再び目覚めることが出来た。強い衝撃とともに。空を見上げると満月が掛かっていた。潮時のようだった。でも不可解だ。この体はボクが知っている”あたし”ではなかったから。腕を見るとそこから血潮がほとばしり出ていた。まあ、こんなのはすぐ治る。近くにあの子がいた。どうやら眠っているようだった。見慣れないヴァンパイアもいた。敵意は無い。それ以前に片羽をもがれ体中に傷を負って動けずにいた。状況が呑み込めないまま、強烈な殺意を背後に感じ振り向いた。男
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  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   エピローグ 鈴風の物語 十六夜との約束(3/3)

     部活動棟の屋上は日本庭園になっていた。枯山水というのだろうか、水はなくて緑の芝生と黒い岩、波紋がついた白い砂利のコントラストがとても綺麗だった。「ここは、あたしが潰したリアル園芸部が作ったらしい。荒れ放題だったけれど、今は業者を入れて管理させてる。創業家の権力を行使してね」 明るく笑った。その表情とは逆に潰した責任を感じているのが分かった。いい人みたい。「でさ、頼みなんだけど」「何でしょう」 この時あたしはクチナシ衆の立場を忘れて話を聞く気になっていた。それはこの前園十六夜という人の人を惹きつけてやまない魅力の虜になったからだと思う。ひよりさんがこの人のことを鬼って言うのも分かる気がした。こんな強いオーラ、普通の人なら魅了されるに決まっているから。「鈴風さん? それとも風鈴って呼べばいい?」 咄嗟に思ったのはこの人には本名で呼んでもらいたい、だった。「鈴風でお願いします。呼び捨てで」「じゃあ、鈴風。あんたの妖術をあたしにかけて」 あたしがとぼけていると、この前園十六夜の体を使って志野婦を再爆誕させる「身中蛹化」のことだと言った。「死にますよ」「知ってる。それを死なないようにかけて欲しい」 「身中蛹化」をかけて母子を入れ替えろ。つまり志野婦でなく前園十六夜を再爆誕させろということだった。それが前園十六夜の頼みだった。「そんなことしたら、十六夜さんが神様になっちゃいます」 それはそれで人としての死を意味していた。「分かってる。でもそうでもしないとこの街のカルマは解消しないから」 前園十六夜は枯山水の白砂の中に踏み入って立ち止まると、空に両手を突き挙げ背伸びをしながら言った。「神様なら新しい世界が作れるだろ?」 とても簡単そうに言ったけれどそんなことどう考えても無理に思えた。でも、前園十六夜ならそれができそうな気がした。「わかりました。やってみます」 それは当然、わたしが拠って立つ人たちを裏切ることだ。赤さんたち、大殿、志野婦様をだ。でもわたしはなぜだかそれが今選べる一番の方法のような気がしたのだった。 部活動棟の非常階段を降りながら前園十六夜が、「神様になったらこの風景も眺めるしかできないのかな?」 辻沢ヴァンパイアの始祖、宮木野の遺訓、「人為は須くこれに従うべし」 これは辻沢の人たちとの融和を促すために

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   エピローグ 鈴風の物語 十六夜との約束(2/3)

     5限は古文。退屈過ぎ。「お弁当後に小野ジーは反則だろ」 授業が終わって目覚めたひよりさんがよだれを拭きながら言った。わたしもそう思うけど、あなたは食べ過ぎなのよ。で、6限はなくてホームルームの後、ゲーム部へ。 前園記念部活動棟は今年出来たばかり。カフェテラスあったり、柱廊下に窓には緞帳カーテン下がってたり、ゴージャス過ぎて目が眩む。「ここのデザイン、ヤオマン屋敷デザインした人と一緒なんだって」 ひよりさんは色々知ってて時々何者? って思う時ある。「セークン先生の弟子の弟子の弟子の人」 誰? セークン先生。ひ孫弟子とかもう関係なくない?「そうなんだ」 ゲーム部は人気があるから、部室に入りきれないほどの一年生が集まっていた。「どうする?」 ひよりさんもあきらめ口調になってる。「他見に行こうか」 ということで二人で部活棟を歩き回ったけれどどこもパッとしない。そろそろ帰ろうかってなった時、廊下の突き当たりの部室のドアが空いていたので覗いてみた。VRブースが二機置いてある。それも最新のでグレードも最上級機種のようだった。正面の柱にきったない字で『えんげー部』と大書されていた。花とか植えるのにVR必要か?「ここ見ていかない?」 振り返るとひよりさんが遠くから首を振っていた。「どした?」「そこ、鬼が住んでるから。誰も入りたがらないから」 鬼て。聞けばこの学校を経営するヤオマンHD創業家のお嬢様が部長を勤めてるらしい。部員も三年が一人で、一年なんて入り込む余地もないという。「ちょっとだけ」「あたしはいいから。一人でどぞ」 逃げてった。どうしよ。ちょっとVRブースだけでも、抜き足差し足(死語構文)「ゴラ!」 ヒーーーッヒ!「ごめんなさーい」 一瞬身構えた。

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   エピローグ 鈴風の物語 十六夜との約束(1/3)

     |妾《あたし》、いやいや今はわたしだ。わたしは女学生になった。志野婦様の真っ青な制服と違って辻女のはデザインが古臭いけど嬉しい。女学校の制服に袖を通す日が来るなんて思ってもいなかったから。 小学校を出てすぐに千福楼に売られたから制服を着るのは初めてのことだ。|印《しるし》を見て遊女になる前は楼で下働きばかり、女学生なんて昼に使いに出された時チラッと見るだけだった。同い年くらいの制服姿の子たちが繁華街で色付き水を飲みながら楽しそうにお喋りしてたけど、自分とは関係ない世界だと思っていた。 今年の春前、赤さんに呼ばれて拠点に行くと突然言われた。「風鈴太夫。JKになってくだちゃい」「JKになれとはよ」「知らないのでちゅか? 女子、高生のことですよ。そんなことでは時代に置いてきぼりを食らいまちゅよ」 語尾の「ちゅ」はスルー、わざわざ「ジョシ」J、「コウセイ」Kって指で書いたのウザかった。赤さんは若いつもりかもだけど、あなたがとっくに置いてきぼり(死語構文)だから。 JKになった目的は二つ。一つは志野婦様の魅力を女子高生の間に広めること。もう一つは志野婦様復活のための形代を探すこと。これまで別の人間が凌奪していたけれど、そういう子たちはみな形代にする前に死んでしまった。それで形代にするにふさわしい人間が分るのは「|身中蛹化《しんちゅうようか》」の使い手であるわたしだということになって、お役が回って来たのだった。どうやって探せばいい? 鬼子。あたしは昭和33年の暮れに|柊《ひいらぎ》と|田鶴《たづ》さんと分かれて以来、鬼子と出会ったことはない。前任者は情報を持っているようだけれど、クチナシ衆のわたしに教えるつもりはなさそうだし。 それで、まず魅力の伝播からすることにした。これはゴリゴリバースを使う。VR空間なら志野婦様の蠱惑的なイメージを潜在意識に刷り込めるからだ。 オリエンテーションとか身体検査とか、JK通過儀礼が一息ついて

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   3-117.みんなが優しい世界を(4/4)

     あたしは後ろから腰を抱かれて加速した。それは冬凪も同じだった。あたしを小脇に抱えているのは鈴風ではなく志野婦だった。 振り返ると、鈴風、ユウさん、高倉さんが螺旋の外から手を振っていた。あたしたちの目の先には新しい螺旋の渦巻きが出来ていた。「どこへ?」「新しい世界を作るんだろ? 夏波」 その声は十六夜だった。志野婦の中身は十六夜なのだった。微妙にさじ加減を変えて羽化するのを志野婦でなく十六夜にする。鈴風の謀反は完成していたのだった。あたしはようやく十六夜に会えた気がした。「そうだけど、どうやって?」「三人で作るんだよ」「あたしも入れてくれるの?」 冬凪がうれしそうに言った。「ボクと夏波と冬凪の三人で」 螺旋の中心に十六夜と冬凪とあたしが長棹を大地にぶっさすビジョンが見えていた。それはまるで、「そうだよ。国作りだよ」 でも、あたしみたいな女子高生が国なんて作れるとは思えなかった。「自信ない」 十六夜が冬凪とあたしを解放した。三人のスピードが爆上がりになって、ビジョンの中心に驀進しはじめる。どんどん近づくビジョン。「大丈夫。ボクら三人ってさ」 十六夜が自分を指さして、「イザ」 冬凪を指さして、「ナギ」 もう一度自分を指さして、「イザ」 そしてあたしを指さして、「ナミ」「イザナギとイザナミだから」(死語構文) と言って笑った。十六夜と冬凪とあたしは螺旋の中心に激突した。長い暗転の後、目が覚めるとそこは十六夜が最初にギューンした純白の世界だった。何もない世界の中心に長棹が浮いていた。「これが世界樹の苗」 十六夜が教えてくれた。

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   3-117.みんなが優しい世界を(3/4)

     孟宗竹の道をしばらく行くと、爆心地があったらちょうど端のあたりに瓦葺きの古そうなお屋敷があった。腰くらいの高さの垣根に白い花がビッシリと咲いていて甘いクチナシの香りがただよっている。「旧千福家だよ」 冬凪が言った。 水が打たれた石畳を歩いて玄関前まで行くと格子の扉が開いた。玄関の板の間に和服の女性が正座して頭を下げていた。「千福楼へようこそいらっしゃいました」 頭を上げた顔を見たら千福ミワさんだった。「あの千福ミワさんですよね」「はい、私が千福楼の女将、ミワでございます。さ、遠くからお疲れでしょう? お上がりになって我が宿でおくつろぎください」 いそいそとスリッパを並べるミワさんを見ながら、「千福家って旅館だったの?」 冬凪に聞くと、「違うはずだけど」 なんか様子が変だけどノリで付き合うことにする。「みんなあがろう」 それぞれスリッパに履き替えてミワさんに先導されながら長い廊下をすすむ。「辻沢女子高のみなさまには、毎年修学旅行で使っていただいてますんですよ。はい、みなさまのお召し物で分りました」 ミワさんすっかり旅館の女将だ。「京都は人が多いですね」「この時期は特に混雑しておりまして、お客様にはほんとうにご苦労おかけしまして」 と恐縮して言うけれど、思いつきで言った京都がミワさんのツボに嵌まったらしく、それからずっと京都観光案内をしてくれた。「ここ京都?」「辻沢だから」 それからずいぶん歩いたけれど全然部屋に案内されない。どこまでも続く長い廊下をずっと歩いている。その先を見ると点になるほど廊下が続いていた。「ミワさん。まゆまゆさんに会いたいですよね」 本題を切り出してみた。すると周りの音がなくなって色が褪せ始めた。別世界にズレ込み始めたのだ。ミワさんもカチッとした女将姿ではなく、黒髪を垂

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   3-117.みんなが優しい世界を(2/4)

     愛した人には誰もがきっとまた会える、だよね。ユウさん。背中のユウさんの重さを感じながら、前世でも現世でも来世でも、きっとユウさんとあたしは会い続けるんだろうと思った。「夏波、もう歩く」 ユウさんが背中で目を覚ましたようだった。「なんだ、この格好。辻女の制服じゃないか」 あたしの背中から降りたユウさんが自分の服装を見て言った。「いやだった?」「そんなことない。何年ぶりかって思って」「え、ユウさん辻女生だったの。じゃあ、あたしたちの先輩?」 冬凪も知らなかったらしい。「そうだよ。悪いか?」「ううん。学校行ってたんだって」「あれを行ってたといえればだが」 「ユウさんは優等生でしたよ」 今度は冬凪の背中の高倉さんが目を覚ましたようだった。「盗んだバイクで走り出したと思ったら猛スピードで壁に激突して無傷だったんです」 あ、軽いデジャヴュが。それなんか覚えてるっぽい。「あら、私まで女学生にしていただいて」 高倉さんが自分の服装に気づいたよう。「和服のほうが良かったですか?」「いいえ。一度着てみたかったんです。私がデザインしたものなのに着られてなかったものですから」 辻女の制服デザインしたの宮木野だった。それでちょっと古くさ(ry。(死語構文) 冬凪、鈴風、ユウさん、高倉さん、あたしの5人は、古き良き辻沢の街を歩きながら目的地に向った。途中は高倉さんの止まらない面白話でまったく退屈しなかった。やがてあたしたちは辻沢の南に位置する辻沢発祥の地、六道辻に着いたのだった。六道辻のバス停から孟宗竹の中を真っ直ぐに伸びる道の先に、大事な人たちはいる。「行こう。千福|母子《おやこ》の元へ」 冬凪とあたしは、千福みわさん。千福まゆまゆ、茉優奈《まゆな》ちゃんと茉優乃《まゆの》の双子の姉妹。三人を会わせる約束を果たすためにここに戻ってきた。

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   2-50.蘇芳家(2/3)

     幌のドアを開けて外に出ると、沢山の人が屋敷前の広場に集まっていた。背中に空の籠を担いでいて冬凪がそれを、「これから山椒の収穫に行く人たち」 と言った。 その中のダッドキャップを被った半袖Gパン姿の大柄な女性に鞠野フスキが近づいて行って何やら話始めた。少しやりとりをした後、冬凪とあたしを呼んだのでそちらに行くと、その女性は半袖の裾の中にたばこを巻き込んでいるようで、どう見てもアニキみたいだった。年は鞠野フスキが言ったようにあたしたちとそれほど違わなさそう。「この方が蘇芳ナナミさん」 鞠野フスキが紹介してくれたけれど、

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   2-50.蘇芳家(1/3)

     千福家の土蔵のある竹林で鞠野フスキに会った後、ホンダ・バモスTN360の後部座席に乗せて貰った。「全速力で行きましょう」 と言って低速力で走り出したバモスくんは、しばらくしてN市へ向うバイパスに乗った。大曲大橋を越えて辻沢のさらに南部へ向う道へ入る信号待ちをしているとき、「これから山椒農家さんを訪ねるよ」 鞠野フスキが教えてくれた。山椒農家さんといわれたので、てっきり冬凪が親しくしているの四ツ辻の紫子さんのところだと思ったけれど、そうではなく別の場所だった。「蘇芳家というんだよ。千福家や調家とも縁のある旧家で、南辻沢の山間地の

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   2-49.調レイカ(3/3)

     あたしは前と同じでない方がよかったので、「冬凪先行ってくれる?」「全然いいよ」 開き市松人形の中に入った冬凪を見送って蓋がしまりしばらく経つと、白市松人形が中割れして再び開いた。前回帰る時も同じ状況だったのに、今は落ち着いているからなのか、そこに冬凪がいなかったことがこんなにもあたしを不安にさせるなんて思わなかった。何か大きな忘れ物をした感覚。「「藤野夏波様、どうぞ中にお入りください」」 白まゆまゆさんに促されて白市松人形の中に入ると、「「藤野夏波様。お願いがあります。どうか私どもの母の消息をお尋ね下さい」」

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   2-49.調レイカ(2/3)

     死語構文はさておき、「帰ってきた」辻川町長といい、調レイカといい、あのころの辻沢の人たちは年を取らなさすぎ。「ヴァンパイアなの?」「かもね」「太陽出てるんだけど」 道に覆いかかる竹の隙間からキラキラと夏の太陽が差し込んでいた。そこを調レイカは平気な顔で歩いていた。ヴァンパイアは太陽に当たると死ぬっていうよね。どういうこと? その疑問にこたえてくれる様子で冬凪は顎に指を充てるいつものポーズになった。「調家は六辻家の筆頭なんだけど屋号もあって、辻に王様の王と書いて辻王って言うんだ。何でだと思う?」 調家は辻沢ヴァンパイ

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